触れるだけのキスよりは強く、でもあの日のキスよりは弱く、何度も彼の唇が私の唇に触れた。

「2つ目、思いついた?」

さっき手が嫌と言ったからだろうか。
今にも唇が触れそうな距離にいるのに、決して彼の手は私の体に触れない。
それがなんとも、もどかしかった。

「…ぎゅってしてほしい…です」

こんなの明日思い出したら、恥ずかしくてもう立っていられないかもしれない。
恋とアルコールは、混ぜたら危険だということを思い知る。

彼は顔をくしゃっとして、はははと笑った。
そしてやっと彼の手が、私の体に触れる。

今までになかったくらい強く抱きしめられると、また目に何かが溜まっていく。
嬉しいから?幸せだから?
それとも、彼との関係が泥沼になる予感がしているから?
理由ははっきりとわからない。

「あなた、さっきは触んなって言ってましたけど?」

ただ彼のそんな声が聞こえたら、たぶん幸せなんだと思った。

「そんな風に言ってない」

私も彼の腰に腕を回して、ぎゅっと強く抱きしめた。

「ほんとかわいくね〜」

ー はいはい。そうです、可愛くないです。
そんなこと、自分が一番よくわかってる。
もう何度彼に、可愛くないと言われたのだろう。

「ひゃ!」

ふてくされ気味の私の左耳に、生暖かい感触がして、肩をすくめた。
突然の刺激と、耳元で響く音が相まって、また私の理性は少しずつ破壊されていく。

わずかな理性で抵抗してみるものの、彼の体重が乗って、とうとう私は布団に押し倒された。

「可愛い桃田さんが見たいんだけど」

胸元をはだけさせて、なにか悪いことでも企んでいるように妖しく微笑んだ彼にそんなことを言われたら、もう私にできることなんてない。

私の両手は、そんな山辺さんの頬に伸びていた。
その手に、彼の手が重なる。

「なんも考えないで。俺だけ見ててね」

バクバクと壊れそうな心臓を抱えて、私はついに目を瞑って、彼に体を委ねてしまった。