「もう俺、明日の朝飯カスしかないんじゃね」
私はいい罰ゲームが思いつかず、明日の朝ごはんから何を頂戴、なんてことばかりを言っていた。
朝ごはんがなくなると言っていながら、彼はまだ諦めない。
またトランプを赤と黒に分け始めた。
「え、まだやるんですか?」
「悔しい。桃田さんに負けるとかありえない」
ー その発言の方がありえない。
「手加減しましょうか?」
嫌味たっぷりに私が言うと、彼はまた悔しそうに舌打ちをする。
こんな山辺さんのこと、他の女の子も知っているのかな。
今日知れた彼の強がりな顔は、私だけのものにしたくて。
たぶんこの話は、美沙にもしないような気がしていた。
「手加減しなくていいから、次俺が勝ったら3つくらい言うこと聞いて」
負けたことが悔しい様子の彼は、さっきからまぁハイペースにブルーワインを飲み干していた。
そのせいなのか、要求事項が理にかなっていない。
「や、意味わかんないですよ」
私が口元を緩めると、なぜか彼はいつもの余裕たっぷりの顔で、自信ないんだ?と挑発した。
負け越しているくせに、随分な態度だ。
「わかりました。でも私が勝っても同じですよ!3つ聞いてください」
私も頭が悪くて、ついその挑発に乗ってしまうと、彼はにんまりと笑う。
「スピード!」
パシン、と一層強くトランプが机に叩きつけられて、最後の勝負がスタートした。

