レフティ


【山辺です。承りました〜】
【ちなみに、これ俺の個人スマホなんで】

来週の金曜日の同じ時間に予約の連絡をすると、まさか山辺先生からそんな返信が届いた。

言われてみれば、名刺に書かれたアドレスは手書きだった。

ー やり口が…手慣れている。

最後に彼氏がいたのが6年も前とはいえ、男性との出会いとか付き合うまでの過程とか、そういう意味での経験は少ない方ではないのに。

こんなやり方されたのは、初めてだった。

そのあと先生からは、メッセージアプリのIDが送られてきて、私は容易くそれにメッセージを送った。

随分と可愛らしい猫のアイコン。どこまでもあざとい。

【桃田です】
【先生、手練れですね…】

大体の男性は、女性慣れしてる、というようなことを言うと喜ぶ。

こちら側としては嫌味も含んでいるのだが、男性側はそれを、自分がモテる男に見られていると思うらしい。

しかし、やはりイケメンは違った。

【えー?桃田さんにしたのが初めてだよ】

ー いや、絶対嘘。
その白々しさには、思わず笑った。

美沙も言っていたが、これは相当チャラそうだ。

だけどそういう人の方が、こちらも気楽に付き合える。

好きになられてしまったら最後、断ることしかできない私は、そういう適当にときめける関係の方が、長続きして好きだった。