レフティ


「え、ちょい!今は俺が先だろ!」

「えーなんのことですかー?」

バシバシと激しい音を立てながら、ゲームは展開されていくが、案の定山辺さんは口ばっかり動かして、手が動いていない。

「あがり!」

私が最後の1枚を出し終わると、彼は口を尖らせながら、ぶつぶつと繰り返した。

「いやまだわかんねーから。まだわかんねーよ」

スピードは確かに、最後に相手も持ち札をなくすことができれば、引き分けということになる。
ただどう見ても、もう彼が持ち札をなくすことは不可能。

「負けを認めなさい」

調子に乗った私に、彼はわざと舌打ちをした。
意外と彼も負けず嫌いである。

「なに!なにすればいいの!」

コップのワインを一気に飲み干して、彼は逆ギレ気味に聞いた。
そんな姿が可愛くて、つい意地悪をしたくなってしまう。

「ん〜…あ、明日の朝ごはん。デザート私にください」

「え、そんなんでいいの?」

そんなんでって、単価で考えたらきっとハーゲンダッツくらいするのに。
彼にとってはよほど想定外だったようで、ふっと口角を少しあげてから、わかったよ、と頷いた。

「はいじゃあ2回戦ね」

たぶんこれは、私が負けるまでやることになるのだろう。
男の人って、よっぽど女に負けたくない生き物のようだ。

わかっていたって、私も相当の負けず嫌いを自負している。
男を立てる、なんてできるはずもない。

「スピード!」

それから3回、私の連勝であった。