私が服を着替えているほんの数分の間に、手早く着物を着直した先生は、「あと4回終わったら桃田さんもこうなれるよ~」なんて笑った。
「次の持ち物は長襦袢なんだけど…持ってる?」
「ながじゅばん…?たぶん持ってないです」
「ん、じゃあ貸出し用の用意しとくね。身長は…」
先生は私を上から下まで見て、口元を緩めた。
「ん~Sサイズだね」
「まだ身長言ってないですけど?」
いたずらっぽく笑った先生に、私は口を尖らせた。
「あはは、ごめんごめん。あとこれ、次の予約取るときはここに連絡してね~」
そう言って渡されたのは、先生の名刺。
「悠太(ゆうた)さんって言うんですね。うちの弟と同じ名前だ。漢字違うけど」
「…ちなみに。全然関係ないことなんだけど」
また山辺先生は、イケメンの顔をして言う。
「桃田さんは、彼氏いるの?」
まさかの質問に驚いた。
大体この台詞を言うときも言われるときも、そういう気のあるときだと、感覚的に知っていたから。
「いないですけど」
嬉しそうに見えた先生の破壊力抜群の笑顔に、帰り道の私の胸は、まあ跳ねて跳ねて仕方なかった。
― 脈ありなのかな~え~
美沙にさっそく報告して、私は次の予約を、言われた通りのアドレスに連絡した。

