レフティ


それからしばらくして、ふらふらと歩きだした私たちの目に入ったのは、トンデミーナという円盤型の座席が回転しながらスイングするアトラクション。

「あれ、楽しそう」

不意に言葉にしていた。

「ん、じゃあ乗ろっか」

寒そうにポケットに手を突っ込んでいるから、そう言って笑いかけてくれたときに目にかかった前髪が、そのままになっている。

艶のある黒髪の隙間から覗く、優し気な瞳。

ー なんだかまるで……

肩を並べてアトラクションに向かう私たちは、もしかして、ひょっとしたら、見る人によっては。
そんな風に見えていたりするのかな。

…そうだといいな。

見上げた彼の横顔に、緩んで戻らなくなった口元に気づかれないよう、そっとマフラーに鼻まで埋めた。

「寒い?」

「ううん。大丈夫」

何食わぬ顔して答えたものの、今日はもうずっと、彼と目が合うだけで胸がうるさい。
明日の夜までずっと一緒だなんて、私は自分がどうなってしまうのか、いささか心配であった。