その後、私は健くんとは一定の距離を保ちつつ、身の危険を感じていたことから、ミドリくんに連絡を取っていた。
「二次会行く人ー!?」
幹事のマサオくんの声に、おおよそ半分くらいが手を挙げた。
「あれ、里香も美沙も行かないの?」
手を挙げていた加奈子が、不思議そうに言う。
「ごめんね、このあと予定があって…」
美沙の予定とは、たぶんあの“オラオラ系”だろう。
合コン中も幾度となくスマホを確認していたのを、私は見逃さなかった。
加奈子たちには「私も」とそれとなく答え、こっそり美沙にだけは事情を説明すると、彼女は眉毛を吊り上げて、「はー!?」と大声を上げる。
怒り心頭の美沙は、ミドリくんとの待ち合わせ場所まで一緒に付いて行くと言い、幹事のマサオくんには、健くんも絶対に二次会に連れて行くようお願いしてくれた。
「美沙ありがと」
「いいよ全然!てか山辺先生やばくない!?それやばいんだけど!」
酔っているのかなんなのか、美沙はいつも以上に興奮した様子だ。
でも確かに、思い出す度にあの先生は“やばかった”。
「かっこよかったなぁ…」
ぽつりと呟いた言葉は、新宿の喧騒に紛れた。
薄暗い高架下を抜けたところでミドリくんの姿を見つけると、ほっと心が落ち着いてゆく。

