「あんたたち、遅い!」
待ち合わせの新宿駅で、加奈子は仁王立ちしていた。
「ごめんごめんごめん」
平謝りする私たちに頬を膨らませる彼女は、私たちの中学の同級生の1人だ。
「まぁまぁ。間に合うから大丈夫だよ、ね?」
そして今フォローを入れてくれた彼女も、同じく中学の同級生で、七海という。
今日の合コンは、私たち4人と、美沙の会社の同期2人の計6人で参加することになっていた。
揃いもそろって色が違うだけに見える膝丈のスカートを揺らしながら、私たちは男性陣の待つお店へと向かう。
幾度となくこなしてきた合コン。
大していい出会いがないことはもうわかっているはずなのに、毎回毎回淡い期待に胸を膨らませ、私たちはそれに向かうのだ。
「美沙!」
店内に入ると、すでに男性陣と美沙の同期2人は席に着いていた。
「ごめんね~遅くなっちゃって」
私たち4人が席に着くと、マサオくんが店員に声を掛けて、ピッチャーの生ビールが2つ運ばれてきた。
私の苦手なタイプのやつだ。
「生でいいっすか?」
「あ、うん。ありがと~」
目の前に座った男性は、率先して女性陣にビールを注いでくれているが、それがあまり上手ではなくて、思わず笑ってしまった。
「下手ですいませんっ」
私の8割方泡となったビールグラスを、自分の半分ほどが泡のものと交換しましょうと彼は提案したが、どちらも対して変わらない。
「大丈夫大丈夫。そんな変わらないよ」
かぁーっと言って声をあげて笑いながら謝る彼は、健くんといった。
歳は私たちの1つ下で、25歳。
「佐藤健と同じ漢字なんすけど、読み方はケンなんすよ!」
彼はご丁寧に、名前の漢字まで教えてくれた。
~っす、という喋り方が耳に残る彼は、まん丸の瞳と大きな口が特徴的だ。
仕事はダンス講師をしているらしく、確かに周りの男性に比べて少しだけ、筋肉質にも見えた。

