「今日ど?収穫ありそう?」
スタッフのくせに、私のビールをひと口飲んで、彼はそう聞く。
「んー…もう吉祥寺やめよっかなって感じかな」
私風情が大変失礼だが、先週もその前も、なんだかパッとしないのだ。
「まじかよー。でも美沙ちゃん楽しそうじゃん。あーゆうの好きそうだよね」
そう言った目線の先にいた美沙は、確かに彼女のタイプであろう、“オラオラ系”な男性と楽しそうに話していた。
「…オラオラ系って今も使う?」
「えー使うんじゃん?あなたの方が若いでしょーが」
コツンと私の頭を叩いたミドリくんは、正直今までに知り合った男性の中で、断トツ私の好みなのだ。
初めて出会ったとき、マイさんの目を掻い潜って何度もアタックしに行ったのは、私の方だった。
真正面はよくいそうな塩顔の大学生風なのだが、切れ長な瞳とすっと通った鼻筋、シャープな顎が、横顔イケメンを演出している。
年齢は私の3つ上で、4月に誕生日を迎えたときから、20代ラストだとよく嘆くようになった。
「今日行く?」
この誘い方も、すごく好き。
ミドリくんは酔っ払うと、少し厚めの唇を真っピンクにして、まるで赤ちゃんのように甘えてくる。
何度かそれに絆されそうになったこともあったが、やっぱり私は堅物で、彼との間には飲み友達以上のなにかはない。
「行きたいけど…このあと合コン…」
ミドリくんは豪快に笑って、お盛んだね〜と言ったあと、合コン終わりか明日の夜行こうとリスケしてくれた。
2人で飲みに行く仲の男性は他にも何人かいるが、ミドリくんはその中でも特別に好きだった。
なんと言っても彼は、絶対に私を好きと言わないから。

