こうしていると、なんだかほっとする。
気の置けない仲間たちと大笑いして、おいしいご飯を食べて、お酒を酌み交わして、適度に甘やかされて。
悠太のことを考えているとまるで別人のようになってしまう自分を、忘れることができた。
高砂に座る先輩と、旦那さんになった田中部長の姿は、とても幸せそう。
同期たちにプロポーズの話をする舞も、ピンク色のオーラを纏っているし。
なんだか自分と悠太には、そんな未来が待ち受けている気がまったくしなかった。
パーティーの終わり、幸せのおすそ分けです、なんて言って高砂に飾ってあったお花を係りの人から手渡されたが、これで幸せになれるなら苦労しない。
「峰岸くん、幸せのおすそ分けだって。いる?」
冗談半分にエレベーターの中で彼に聞くと、「いるいるいる」なんて嬉しそうに言うものだから、私はそれを彼に渡した。
「桃いらないの?幸せだから?憐れみですか!?」
エレベーターを降りてもう外だというのに、酔いのまわった彼は、肩に手を回して、だる絡みを続ける。
そんな彼を一生懸命に制御してくれている同期たちと、このまま二次会に行こうなんて話になり、私たちはそこから足を進めた。
「舞、西村くん大丈夫なの?」
「うん。今からこっち合流するよ~」
「え、そうなの!」
「もう先輩いないからいっかなって」
その舞の言葉で、今日ここに西村くんがいない本当の理由がわかった。
彼女が、行かないでほしいと言ったのだろう。
「…いいな、幸せそうで~」
おどけて見せたものの、彼女がいつか嫉妬に狂ってしまわないか、少しだけ心配していた。
さっき峰岸くんから聞いた話によると、10月の人事異動で亜紀先輩と西村くんは、同じ課の上司と部下になったらしい。
それが余計に、彼女の不安を煽るのだろう。
でもおそらく舞は、それを包み隠さず西村くんに伝えている。
それが円満の秘訣なんだろうか。

