先輩たちは挙式はハワイで挙げたということで、今日は披露宴でも二次会でもなく、パーティーという形をとったんだって、とさっき峰岸くんが言っていた。

「亜紀先輩、結婚おめでとうございます!」

私にはその違いがよくわからなかったが、真紅のカラードレスは亜紀先輩のエキゾチックな顔立ちにぴったりだ。
純白のウェディングドレスもいいけれど、先輩にはこちらの方がしっくりくるような気がする。

「桃~舞~久しぶりじゃんね~。来てくれてありがとね」

相変わらず東北訛りが少し出ていたが、それも可愛いらしい。

「先輩!舞結婚するんすよ!」

同期の1人が、余計な茶々を入れた。

「聞いたよ~西村くんでしょ?ほんとにおめでとう。呼んでもらえんかもだけど、写真見せてね。舞の花嫁姿楽しみだわ」

やっぱり心のどこかで舞は、先輩をいまだに敵視しているように見える。
何枚も上手な先輩の言葉に、彼女はほんの一瞬だったが、顔をしかめたから。

「で、桃は?彼氏いるの?」

そして峰岸くんは、さっきからずっと隣で、あれを食べるかこれを食べるかと、まるで親戚のおじさんのように世話を焼いてくれていたかと思えば、急にそんなことを聞いた。

「……いるよ。峰岸くんは?」

― いるって、迷いなく答えられなかった。

「俺昨日だよ、別れたの。振られたの~遠距離だった彼女に~」

がばっと私に抱きついて、彼は嘘泣きをしてみせた。
そんな姿に、舞たちは大笑いをする。

昨日振られて今日結婚式だなんて、哀れにも程があるな。

「かわいそう…」

そんな思いから出た言葉だったが、それは私の意図したと通りには、周りに伝わらなかったようだ。
より一層大きな笑い声が、会場に響いた。