「はい常連さんご到着でーす」
「ちょっと!」
リストバンドを渡すスタッフの男性とは、顔見知りどころか、飲みに行ったことさえある仲だ。
色々な団体が街コンを企画しているようだが、数ある中でも、この団体が主催の街コンは特に人気で、20代限定の今日の企画は、定員オーバーになっていた。
毎週毎週、よくやるなと思う。
もちろんそれは、欠かさずに参加している自分も含めてだ。
「えーリカちゃんとミサちゃんでしょ?俺、覚えてる?先々週テーブル一緒になった〜…」
「あぁ…こんにちは〜」
席に着くとすぐに、へらへらした男性たちにそう声を掛けられた。
愛想笑いに気づいて欲しいのだが、その男性たちは、構わず私たちの前に腰を下ろす。
先々週会っているらしいが、まったく誰だか思い出せない。
ちらっと美沙の顔を見やったが、恐らく美沙もわかっていないようだった。
街コンではたまに、こんなことがある。
先週なんて、まるで同窓会のように、男性も女性も見たことのある人ばかりだったし。
「もう里香もスタッフやったら?」
先程入り口でリストバンドを渡しながら私たちを嘲笑った彼は、ミドリくんという。
翠という名前でメッセージアプリに登録しているが、果たしてそれが本名なのかもよく知らない。
「やだよ。マイさん怖いもん」
マイさんというのは、この団体の女ボス。
噂によるとバツイチで35歳以上だというが、そんな風にはまったく見えない、現役バリバリの女性。
そしてこれも噂だが、ミドリくんの元カノらしい。
マイさんは、男性スタッフと女性参加者が仲良くしていると引き剥がしにくるが、自分は男性参加者に自ら声を掛けにいくという、暴挙に出る人。
確かに、これだけの頻度で参加するくらいなら、スタッフになって探した方が楽だとも思うのだが、それがあってなるべく関わり合いになりたくないのだ。
ミドリくんもまたそれをわかっているから、あははと笑うだけだった。

