彼と付き合いだして早1ヶ月。
街はクリスマスを終えた途端、思い出したかのように年末感を醸し出し、私の焦燥感を煽った。
今年が終わるというのに、このままでいいのか。
― 美沙とのことだ。
あの日以来ずっと、彼女からの連絡はないし、私も連絡を取らずにいた。
悠太の言う通り、今私から何かをしても、たぶんすべてが裏目に出て余計にこじれてしまうだろう。
わかってはいても、1年の終わりというだけで、まるですべて水に流すかのように世の中は、やり残したことはないか?なんて問いかけてくるから。
つい、美沙のことが頭をよぎってしまうのだ。
「年末は?家族と過ごすの?」
「あ、うん。長野のおばあちゃんち帰るよ。悠太は?」
「ん、俺も。年末年始くらいしか実家帰らないからさ~」
彼はソファーに寝転がったまま、ぐーっと大きく伸びをして、気だるそうに言った。
「やだな~帰んの」
ぽつりと呟いた言葉に振り返ると、また彼は悲しそうな顔をしている。
もう聞いてもいいのだろうか。彼の家族のこと。
「……どうして?」
恐る恐る、だけどそれを悟られることのないように、彼に尋ねてみた。
あくまで、世間話の1つとして。
「え?…色々うるさいんだよ、この歳だからさ」
「…あぁ、そっか…」
ただの思い過ごしかもしれない。
前に彼が両利きになったという話のときも、着付けの先生になった理由を聞いたときにも、彼が悲しそうな顔をするものだから、私が変に考えすぎているだけかもしれない。
だけど。
今の彼はやっぱり、嘘をついているように見えた。
まだ私には話してもらえない何かが、彼にはあるようだ。

