---酷い耳鳴りが脳内を犯す。
私を触るゴツゴツした手が、
肩から腰へ伸びて行く。
気持ち悪い…
…そう思う事すら、
…だんだん面倒になってきて…
「このまま、ホテル行っちゃう?」
耳元で囁かれた熱い吐息に、
私はギュッと目を閉じて我慢した。
「てめェ…、何してんだよ?」
不機嫌な低い声が、
どこか遠くの方で聞こえた気がした。
「…てめぇ…?
それって…まさか僕に言ってるのかな?」
「他にいるかよ、クソ野郎。離せコラ。」
突然、
後ろから思いっきり腕を引っ張られた私は
激しい衝撃に顔を見上げた。
そうしたら…
見たこともない程に怖い顔をした
桐山社長の顔が目に映る。
よたつく身体は
一瞬にして彼の胸まで辿りついた。
よかった…。
…桐山社長だ。
…これで、ようやく
安心して顔を埋めることができる………。



