私の憂鬱なんてつゆ知らずな社長は
堂々と私を引き連れて目的の人を探し出す。
ビュッフェ付近の人混みの中に
体格の良い原田社長を見つけると、
彼は躊躇する事なく
十数名の輪の中へ入っていって、
原田社長を呼び止めた。
「原田社長!」
「おー!桐山くん!
藍川くんも!来てくれたんだね!」
「当たり前じゃないですか!
皆さんとの会話を遮ってしまいすみません。
ぜひ僕達も中へ入れてください。」
いつものクールさはどこへやら…。
愛想の良い笑顔で桐山社長が会話を運んでいる。
一見、感じは良いのだが、
桐山社長の鬼畜な一面をよく知る私からしたら
違和感の塊でしかないのが残念だ。
「もちろんさ。
みんなに紹介するよ!
私の第二の息子の桐山流行くんと、
こちらの可愛いお嬢さんが秘書の藍川くんだよ。」
原田社長からそんなユニークな紹介に与り、
私は慌てて直角に頭を下げた。
ー『アハハハハ』ー
と、
何故か周囲から一笑いが起きた所で…
談笑グループの内の一人の若い男性が
桐山社長に声を投げかける。
「桐山さんお会い出来て光栄です。
原田社長からご紹介頂くまでもなくあなたを知っています。
というより、これほど有名なお方を知らない人はこの場にはいませんよ。」
長髪を後ろで一つ結びにした男性だった。
知的そうな顔付きで、
この場では桐山社長の次に身長も高く、
目立っている…。



