それから20分程待って、ようやく店内へ入れたので言われたとおり桐山社長に電話をかける。
「社長、ついに入れました!
お待たせしてすみません。」
まるで潜入捜査官のように言うと、
「了解。すぐ行く。」
社長の返答まで潜入捜査官みたいだった。
頼んでいたパンケーキが届くのと
ほぼ同時に店内へ着く桐山社長。
女の子だらけの店内で、
沢山の視線が私達…
というか桐山社長に集まっていた。
「大変ですね。」
「何がだ?」
「いや、容姿端麗なのも大変なんだな〜って。」
「こんな店にスーツの男が一人だけいたら、そりゃ皆見るよ。」
「…確かに。」
「余談はいいから早く食え。」
社長に促されてパンケーキを頬張ると、
そのとろけるような甘さに
私は「ん〜〜〜〜っ!」と、悶絶した。
「そんなに美味いんだ?」
ははっ、と吹き出しながら社長が聞くから、
「はい!めっちゃ美味しいですよ!
社長も一口食べてみます?」
と聞き返す。
「いらない。俺、甘いもん食ったら死ぬから。」
「なんですかそれ?
確か社長ってコーヒーもブラックですもんね。
もしかして甘いもの苦手ですか?」
「もしかしなくても苦手だよ。
でも、おかげでお前の機嫌も直ったみたいだからよかったわ。」
「…え?」
「朝から生えてたツノが無くなったじゃん。
甘いもんも、そう悪くねぇな…。
パンケーキ様様だよ。」
「…ツノなんて、最初から生えていませんよ…。」



