「でも、なんで藍川さんが秘書に選ばれたのかな〜?社長の秘書をずっと務めてたのは確か…安斎さんって男の人だったじゃない?」
「私もそこら辺の経緯はよく分からないんですけど、どうやら安斎さんは休暇中のようで。
代わりに偶々居合わせた私が秘書やることに…。」
「え、何それ、じゃあ私でもよくない?」
・・・えっ!?!?
「それは…えーっと…」
「なんだ。要は、誰でも良かったんだ〜。
私はてっきり藍川さんがバリバリ仕事できるから選ばれたんだと思ったぁ。」
「いや…はは。そうですね。 」
「じゃ、まだチャンスあるか〜。
因みに社長って、やっぱり彼女いるのかな?」
…なんだその質問?
本人に聞いてくれよ…。
「そこまでは知りません。」
「じゃあ、どこまでなら知ってるの?
社長のことならなんでも教えてほしいんだけど。」
ここまでの会話で、
少し怖くなってきた私は
急いで肉じゃが定食を食べきった。
「ごめんなさい。まだ秘書をはじめて2日目なのでわからないことばかりです。
…それでは失礼します。」
そう言って、そそくさとその場から退散した。
そのあと社長室に戻って
仕事を再開したけれど、
頭の中は矢澤さんとの出来事ばかりが
ぐるぐると渦を巻く。
…あの人は…
社長の事が好きなのかな?
-「じゃあ、どこまでなら知ってるの?」-
って、まるで尋問だった。
桐山社長の、笑うと可愛いところとか
知ってるのは私だけでいい。



