そんな自分の邪な考えには蓋をして、
気になっていた事をもう一度藍川に確認してみる。
「で…、話を元に戻すけど、
彼氏いないって本当なの？」
「もしかして…桐山社長は、ずっと私に彼氏がいるって勘違いしていたんですか？」
「勘違いっていうか、お前が言ったんだろ。」
「え！？」
「俺の笑顔がダーリンに似てるとか、ムカつくことを。」
「……私、そんな事言ってました……？」
「ああ。間違いなく、
耳元ではっきりと言われた。」
「…やだ、…どうしよう…、恥ずかしい…///」
「恥ずかしいじゃねーよ。
…むかつくな。」
「…猫です。」
「何？」
「ダーリンって、飼い猫の事です…。」
「………。」
「オス猫なんです。
私にとっては人生のパートナーのような存在で…。
…それで…ダーリンと名付けました。」
「なんだよそれ…。
紛らわしい名前つけやがって…。」
……最悪だ。
俺はそんな事で悩んでいたのか……。
てことは、なんだ。
俺は飼い猫に似てるってこと？
…それはそれで複雑な心境なんだけど。
「…ごめんなさい。生涯誰にもダーリンの名前は教えるつもりなかったんですけど…。」
「そんじゃ、なんでお前と茶髪は名前で呼び合ってるわけ？ただの同期にしては親密そうだけど。」
「…なっ！南くんは南が苗字なんです！
南くんの方が一つ年上だから私を妹のようだと親しみ込めて伊織と呼んでくれているだけです！」
・・・南が苗字…？
「そうか。苗字か。」
苗字だったのか！！
