…よりにもよってこんな頂上で…。
至近距離で真っ赤な顔の藍川と顔を見合わせる。
…いろんな意味でこの状況は、まずいな。
「大丈夫だから。落ち着けよ。」
藍川にそう声をかけてから手を離すと、
「…まっ……待って…!…私…実は高いところがあまり得意じゃなくて……。手…だけ握っててもらっても良いですか…?」
上目遣いに懇願された。
どれほどの勇気だっただろう。
男嫌いの女が密室の空間でそんな事言うなんて。
小さく震える唇が彼女の緊張を物語ってる。
「ん…。」
俺が手を差し出すと、
そっと手を重ねてきた藍川。
駄目だ。
生き地獄だ。
早くここから出たい。
自分から乗っといてなんだけど、
好きな女とこんな密室空間に閉じ込められて
手を繋いでなきゃならないなんて…
見れば見るほど、かわいいし。
…ホント可愛すぎる。
怯えてるし、抱きしめてやりたいし。
でもできない…って………
何この状況…。



