名前で呼び合ってるあたり、
それで間違いないんだろう。
にしても、他の男を前に彼女を残して帰るなんて
大した野郎じゃねぇな。
そりゃ"ハジメテ"が未だな訳だ。
気まずそうにオドオドしてる藍川を
無言で引き連れて
玄関前のリムジンまで誘導する。
後部座席に乗せようとしたところで
その手を解かれた。
「ちょっと…社長!なんか怒ってます?」
「怒ってねぇよ。
怒る道理もないだろ。」
「…ならいいけど…。
なんで私だけ毎日送ってもらえるんですか?
不公平になってしまうので今日は自分で帰ります。」
「あっそう。
余計な事して悪かったな。」
「って、…やっぱり怒ってるし…!」
「怒ってねーって!」
「何か知らないけど、日曜日までに機嫌直しといて下さいね!それじゃ!」
「………っ。」
嫉妬で苛つく情け無い自分に
拳を強く握り締める。
藍川の後ろ姿が見えなくなるまで見送ると
俺はすぐに仕事に戻った-----。



