なんか俺が誘ったはずなのに、
結果的に藍川に誘われたような………。
とにかく、無事にデートの約束を取り付けて
昼飯を食べ終えた俺たちは
昨日のようにエレベーターで別れた。
午後からは、また頭を切り替えて仕事に専念する。
それからあっという間に夕方になり、
アラームが鳴り響いた。
時刻は定時前。
俺は仕事の手を休めると、
安斎に「ちょっとだけ席を外す。」
と声を掛けた。
「ま〜た、藍川さんですか?」
ニヤつきながら聞いてくる安斎を無視して
エレベーターに乗り込んだ。
昨日と同じように
エントランスについて待っているけど
いつまで経ってもアイツの姿が見当たらない…。
仕方ないので
諦めて仕事に戻ろうとした時だった---。
ロビーからエントランスに向かって歩いてくる藍川。
…と、茶髪の男性社員。
確か、藍川の隣のデスクに座ってた男だ。
男嫌いのクセに、
仲よさそうに二人並んで歩いてる。
「…あっ!"南くん"、またね!」
目の前まで来て
ようやく俺を視界に入れた藍川は、
慌てたように男と別れようとした。
男は何故か俺を見ながら、
「"伊織"、気をつけて帰れよ。」
と一言だけ言って帰ってく。
おかげで俺はすぐに状況を把握できた。
…あー、なるほど。
こいつが例のダーリンか。と。



