「はっ、はい」

 横目で見つめていた顔が急にこちらを向いたので、声が裏返った。央寺くんが一瞬止まって、私は例のごとく顔を赤らめて速攻で俯く。

「やっぱり、ゆっくりでも克服したほうがいいと思う。その対人恐怖症」

 対人恐怖症……そういえばさっきも言われたな。やっぱりそういうふうに見られているのか、私は。そんな症状名をつけられたことなんてないけれど、そうじゃない、とは胸を張って言えない自分がいる。頼子が言う“引っこみ思案”も、その中のひとつだろうし……。

「今日見てたら、とくに男性のお客さんに対して、しょっちゅう声が上擦ってたし、顔が強張ってた」
「…………」
「俺に対してもだけど」
「それはっ」

 央寺くんに対して、昨日今日の中で一番大きな声を出した。でも、やはり二の句が継げなくて言葉を飲みこんでしまう。

「中三の時のアレのせい?」