それがあまりにも綺麗で、あたしは天井の窓から星を見上げた。

「……あれ、姫凛。何してるんですか」

影からでてきたのは、瀬吏だった。

「この作り、いいね。あたし、夜空が好きなんだよね」

「俺は月のほうが好きです」

「……意外。瀬吏ってもっと堅苦しいのが好きだと思ってたんだけど」

「……意外とロマンチストって言いたいんですか?」

あたしが省略したことが簡単に彼にはバレてしまう。

「風呂はあっちですよ」

月だけが、あたしたちを照らす中、彼がお風呂の場所を指さした。

「ありがとう」

すれ違った時に香った、爽やかなコロンの香り……。



お風呂から上がり、部屋着のワンピに着替え、髪を乾かしたあと幹部室に再び戻った。

「姫、おかえりっ!早速ゲームしよう!」

陽楓が出したのは、やっぱりあのゲーム。

櫂茉は1人でスマホゲーム、紫土はお風呂、玻取は音楽、瀬吏は誰かと電話。

あたしたちはゲームを始める。

すると、途中であたしのスマホがなった。

「ごめん、電話。」

それは……

それは、


あたしの昔の仲間……ずっと、ずっと一緒にいたかった

傍にいて欲しかった、大好きなあたしの居場所……。

聖の族の幹部、あたしの昔の仲間の護(まもる)だった。



あたしは放心状態に陥り、みんながそこにいることを忘れていた。

「…ま、もる?なんで……」

「姫凛、今聖が苦しそうで……なんだか記憶がおかしくなって……」

護の声の後ろから、みんなの慌てた声が聞こえた。

……掬の声も。




なんであたしに電話してくるの?

あたしが辛い時に、彼になにも言わなかったのに。

無条件で掬を受け入れて、あたしのことなんて放っておいて。

あたしだって、苦しかった。

あたしの居場所を、あたしとの記憶と思っている掬に乗っ取られて。

「……今更、なんなの?聖が記憶を無くした時、あなたたちは聖に何も言わなかったじゃないっ!あたしが助けを求めても、掬に……」

思い出したら、涙が溢れて、止まらなくなった。

突然大声で叫び出したあたしに、みんなが凝視している。


「…なによ、今更……」

あたしの初恋を、返してよ……。