「田原さんもお昼ですか?」

舌打ちしたい気持ちをこらえながら、私は田原に聞いた。

「いえ、これから営業先に向かうところです」

田原は私の質問に答えた。

いつ見ても本当に存在感が暑苦しい。

「そうですか。

じゃあ、お互いこの辺で」

「その前に、ちょっと話をしてもいいですか?」

立ち去ろうとした私を呼び止めるように、田原が言った。

「はい?」

そう聞き返した私に、
「本当にちょっとだけでいいんです。

すぐに話は終わりますから」

田原は両手を前に出して、お願いのポーズをした。

「すぐに、ですか?」

「はい、すぐに終わります」

一体、何の話をすると言うのだろうか?

そう思いながら、
「別にいいですけど…」

私は答えた。