「昔は昔で、今は今だ。

僕が今つきあっているのは君だよ――芽実」

初めて名前を呼んでくれた…!

たったそれだけのことなのに、私は嬉しかった。

社長がいつもの“佃さん”じゃなくて、“芽実”と名前を呼んでくれた…!

心臓がドキドキと早鐘を打っていて、落ち着かない。

私は深呼吸をして唇を開くと、
「――理京、さん…」
と、社長の名前を呼んだ。

社長はフッと色っぽく微笑むと、
「初めてだね、君が僕の名前を呼んでくれたのは」
と、言った。

「嫌でしたか…?」

そう聞いた私に、
「ううん、とてもいい気分だよ」
と、社長は答えた。

「それで、さっきの質問なんだけど…」

「時間も時間ですから、人がたくさんいますよ?」

さっきの質問を思い出して、私は言った。