七恵と別れて秘書課へ戻ると、
「佃さん、社長がお呼びです」

久保田さんに声をかけられた。

ああ、またなのね…。

マジで心が折れる5秒前の私に、
「頑張ってね」

久保田さんはポンと私の肩をたたいたのだった。

「はい…」

それに対して、私は答えることしかできなかった。

秘書課から社長室のドアに立つと、コンコンとドアをたたいた。

「佃です、入ります」

そう声をかけたら、
「どうぞ」

中から声がかかった。

「失礼します」

私は返事をすると、ドアを開けた。

「お帰り」

社長室の中へと足を踏み入れたとたん、社長が両手を広げて迎えてくれた。

もちろん、彼の目当ては“私”ではない。

社長は私を自分の腕の中に閉じ込めると、髪の毛に顔を埋めた。