「田中さんからだったよ」

私の方に顔を向けると、社長は言った。

「思った以上に長かったみたいだね」

社長はふうっと息を吐くと、私の髪をなでた。

「もう少しさわっていたいところだけど、田中さんに言われたら仕方がない」

「そ、そうですね…。

それでは、失礼しました…」

私は社長から離れると、逃げるように社長室を後にしたのだった。

何なんだ、何なんだ、何なんだー!?

「戻りましたー」

秘書課へ戻ったら、
「あらら、ほどかれちゃったのね」

久保田さんがそんなことを言った。

「ほどかれたも何もないですよ、いつもよりも早く起きて頑張ってまとめたのに…」

もうすでに心が折れそうな状態の私に、
「社長は髪の毛フェチなのよ」

久保田さんが言った。