その夜も、想太はあの夢を見た。


鏡の様な水面を滑る列車の中で、瑠美は車両の反対側で微笑んでいた。


想太は全力で車両を駆け抜ける。瞬く間に日が黄色から赤に変わり、そして漆黒と月明りに包まれても想太はひたすらに走り続ける。


だがあともう少しで彼女に触れそうになった瞬間に、辺りは一寸先も見えない暗闇に包まれてしまう。


「また、ダメだったね」


そうだ……これで何度目だろう。


「デモ、私はずっと待ってるよ。だって想太は、私をちゃんと見てくれたから」

「どうして……! 僕はこんなにも君を求めてるのに」

「さあ……どうしてだろう?」


瑠美の声だけが、想太の耳元で蠱惑的に囁く。



「それはきっと……想太がまだ本気で私を手に入れようとしてないから」