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想太が一命を取り止め、病室で目を覚ましてから一か月が経った。


退院の日が近づく中、病室の窓から道を行きかう人々を見下ろす度に想太は彼女を思い出す。


また、何度も会いに行きたくなった。


あの美しくてミステリアスで、それでいて誰よりも近くに感じられる少女をずっと抱きしめていたかった。


でも、それはきっと彼女は望まないこと。


そして、彼女の最後の望みくらい僕が叶えてあげられなくて……一体他に誰が叶えられるだろう?



だから、今日も思いを馳せて僕は眠る。


あの普通の人には決して見えない列車が、彼女を乗せてどこまでも――水平線の彼方まで連れて行ってくれますようにと願いながら。

    (終)