そして、また想太はあの水の上を走る列車に乗っていた。


日差しを受けて眩しく反射する水面に目を細めていると、不思議とこの空間が懐かしくて愛おしく感じられた。


ここは――僕の家なのかもしれない。


「想太君」


顔を上げると、車両の奥にたたずむ少女が銀髪を揺らしてニッコリと笑った。


「待ってて、瑠美……今度こそは絶対に、会いに行くから」


その呟いた刹那、想太は列車の中を駆け抜け始める。


時折揺れる車両に足元をすくわれそうになりながらも、想太は持てる力を振り絞って走った。


だが……時の流れは依然として容赦しない。


日があっという間に地平線の彼方へ消え、そして月が玲瓏と灯り始めると想太は時間という悪魔を呪った。


今だけでいいから、もし時が止まってくれたら――


それが叶うなら、命だって惜しくないのに。


「瑠美っ!」


想太が叫び、瑠美目掛けて飛んだ瞬間……またあの暗闇が辺りを覆い隠した。


また――ダメだったのか?


悔しさのあまり想太が叫び声を上げかけたその時、胸元から声がした。



「やっと、会えたね」