そこでふと、突拍子もなく、夢から醒めたような感覚に見舞われた。

 いや、正しくは夢を見ているとき、あ、これは夢だな、と気付いてしまうような自覚。


 そして押し寄せる濁流の渦に紛れた、幾重にも重なった後悔。ヒトが歩んできた長年の歴史、その年表の上を積年の恨みが行き交い衝突したように、駆け巡った想いが錯綜して宇宙の星をも跨いで、数百年ぶりに落下する一部のように、私の胸に落下した。

 これは記憶だと悟る。何の前触れもなく訪れた悟りが神さまからのお告げだったとして、せっかく回ってきたチャンスをもう一度ふいにしてしまった喪失感に絶望して、



 私は目を見張った。





──────て、何だ今のは。


 隣で背もたれに頭を預けた日野は、どこか寂しそうに微笑んでいる。


「………ひの、ごめん」

「なぜ謝る」

「わかんない、でもごめん」

「意味わからん」

「ごめん」

「もういいよ」

「ごめ…っ」

 
 身を乗り出した日野が、私の横顔を振り向かせた。