「…え?あの……?」


「お前が好きで大切だから、咄嗟に体が動いたんだよ」


「……は?何言って……」



男の子の変化に状況が追いつかない。


おまけに何を言ってるのかが全くわからない。



「だから!俺はお前に笑ってて欲しいんだよ!泣かせる為に庇ったんじゃねぇよ!」



男の子はバッと顔を上げ、私を真っ直ぐに見つめる。


その目には涙をいっぱいためていた。



「なのにお前は……もうあれから12年もたってんだよ!いい加減に前に進め馬鹿野郎!」


「ちょっ…!女の子に……むかって…」



あれ?この感じ……



「……馬鹿野郎なん……て……?」



前にもどこかで……



「……言わないで…?……ッ…あ……」



そうだ。これは……



私とアイツが喧嘩した時に必ずするやり取りで……この後アイツは……



「やっと思い出したかバーカ。馬鹿に馬鹿って言って何が悪い」



そう言ってニカッと笑う彼を見て私の目から涙が溢れた。



「……う、そでしょ…」



私は震える手で口を隠す。




そしてふと足元に視線を向け、気づいた。


彼の影が伸びていない事に……


あるのは私とブランコの影だけだった。