予想外の出来事に戸惑ってしまう私とは裏腹に、胡桃ちゃんはいつのまにかドリンクバーで注いできたらしいジンジャエールとグラスに浮かぶ氷達をストローでクルクル回すと、思い出したように「そういえば、」と声を発した。
『どっかで見たことある気はしてたけど、あの人あたしらが中3の時からここで働いてたわ』
『嘘、そうなの?全然気付かなかった…』
『そりゃあ美梨はいつもケーキに夢中だからじゃん?周り見えてないくらいがっついてるし』
『う…』
恥ずかしい、と思った。
本当に先輩が一年以上前からここで働いていたのだとしたら、私のことを他のものには一切目もくれず毎回イチゴのケーキばかり頼む変な客だと思っているかもしれない。
いや、でも私も先輩に気付かなかったくらいだし。
先輩だって私が頻繁にこのお店に通っていること、気付いてないよね、きっと。
ううん、そもそも…私が同じ高校に通っていることすら知らないかも。
そう考えると、何故だかチクリと胸が痛んだ。


