「そうなの。おばあさんが、きいちごのジャムをつくるから、おさとうを買いに行くの」
「おいしいジャムができるといいね。いってらっしゃい」
「うん、ありがとう」
 みなれた森でも、一人で歩くと、いつもとちがう道にみえました。ちょっぴりこわい気もしたけれど、おばあさんが、きいちごのジャムをつくるのですから、がんばって、おさとうを買いにいかなければなりません。
 少女は、いっしょうけんめいに、歩きました。
「おや、今日は、一人で、おでかけ?」
 庭に、あそびにくるキツネが、声をかけてきました。
「そうなの。おばあさんが、きいちごのジャムをつくるから、おさとうを、買いにいくの」
「それは、たいへんだね。気をつけて、いってらっしゃい」
「うん、ありがとう」
 おばあさんに、おさとうを買ってきたら、おばあさんは、とてもよろこぶでしょう。おいしいきいちごのジャムができるでしょう。
 少女は、いっしょうけんめいに、歩きました。
 森をぬけると、海べのよいかおりがしてきました。よいかおりのあとには、おだやかな青い海と、にぎやかな街の音がきこえてきました。
 おさとうを売っているお店は、街のまんなかあたりにありました。クラクションを鳴らしながら走る車や、うしろから、チリリンとならす、自転車をよけながら、少女はお店にむかいました。
「こんにちは」
 お店につくと、少女は、あいさつをしました。
「こんにちは。おや、今日は、一人できたの?」
 お店のおくから出てきたおばあさんが、少女にききました。
「はい。今日は、一人できました。帰ったら、おばあさんが、きいちごのジャムをつくってくれるんです」
「それは、よかったね」
 おばあさんは、にこにことして、おさとうを売ってくれました。
 おさとうをうけとると、少女はとてもうれしくなりました。そして、おこづかいのこともおもいだしました。いちごジュースを、買っていいといわれたのです。
 歩いてきて、とてものどがかわいたので、いそいで、いちごジュースのお店にむかいました。
 いちごジュースのお店につくと、少女は、あいさつをしました。
「こんにちは」
 お店には、おばあさんがいましたが、少女の顔をみても、何もいいませんでした。
「こんにちは」
 少女は、もう一ど、声をかけました。おばあさんは、とてもいじわるなようすで、少女を頭から、足元まで、じろりとみて、少しまゆをひそめて、だまってしまいました。
 いちごジュースは、売ってもらえません。少女は、どうしたらいいのかわからず、その場に、たたずんだままでした。
「こんにちは」
 外から、声がしました。
 べつの女の子が、きました。
「いちごジュースをください」
 おばあさんは、にこにことして、いいました。
「ああ、いいですよ」
 あとからきた女の子は、いちごジュースをもってでていきました。お店からでるとき、少女をちらりとみると、くすっ、とわらいました。
 少女は、気づきました。
 いちごジュースを売ってもらえた女の子は、きれいな赤いスカートをはいていました。新しくて、上品で、女の子にとてもよくにあっていました。それにくらべて、少女はふるぼけた、みどり色のスカートでした。おばあさんがあらい、きれいなお日さまでかわかしてくれたものでしたが、赤いきれいなスカートにくらべると、とてもそまつにみえました。
 悲しくなって、少女はお店をでました。