「物騒な世の中になったわね。」

桃果が、呟く。

「ああ。」

「怖いのか?」

「怖いというより悲しい。私が強いの知ってるでしょ?

もしあの場に私がいれば助けてあげられたかもしれない

のに...。」

桃果は、やっぱりほかの女子とは違う。

・・
「そうだな。もし俺たちがいたらな。」

桃果がクスリと笑う。

・・
「そうね。私たちがいたらね。」

「でも、なかなか出会わないだろ。そんな場面。」

しばらくの間の沈黙。

「そろそろ学校に行かなきゃだよ。雪翔。」

沈黙を破ったのは桃果。

「ああ。」

リュックに弁当を詰める。

それを、肩に背負い振り向く。

「ほら、行くぞ。」

「うん。」

玄関を出て鍵を締める。