桜の香り。

木々が揺らぐ音。

子供たちのはしゃぐ声。

頬を撫でる風さえも。

何ひとつ変わってないこの街の音。


僕は君に何を残せただろう。

君は僕に多すぎるくらいのモノを残してくれたね。

あの頃の君に、今の僕ならなんて声をかけるかな。

・・・まぁ変わんないか。

だって、最初の一言があれだし。

『君に曲を書かせてあげよう!』

何を言うのかと思ったよ。

ワガママで、強気でそのくせ繊細。

そんなところも愛しい、って思うんだ。

僕がおかしいのかな?

君にこの気持ちを伝えたら小馬鹿にして笑うんだろ?

酷いもんだよ、全く。

でも、そんな日々が懐かしくて暖かくて宝物。


ほら、目を閉じれば君の声が聞こえてきそうだ。

『瑞樹くん!』

もう一度だけでいいから。

その声で笑顔で僕の名前を呼んでくれないか。

─────なんてね。