それから数ヵ月がたった。

あのあと、俺は巫女にこの事は他言無用だと釘を刺され、ふらつきながら家に帰った。
その後の数週間、俺は情緒不安定の極みで引きこもりにもなった。
表だけでも元気な彼女の両親に同じ人間だとは思えないほど恐怖した。
でも、彼女からの手紙を何度も何度も読み返し、いい加減立ち直らなくてはいけないなと思って外へ出た。
箒を使って久しぶりにフェリーチェの木の上に立つ。

…村は驚くほど平和だ。
この平和は一人の少女の犠牲によって成り立っている。

なにも知らずにのうのうと生きているやつらや、知ってるくせにいつもと変わらない生活をしているやつら。
本当のことを隠し通そうとしているやつら。

そんなヤツがいっぱいいるこの村だが、彼女が守っているのだと思うと俺が憎むわけにもいかない。

「…そろそろ夕方か…」

俺はフェリーチェの木から飛び降りる。