俺は全速力で走る。森の方向に。
彼女の手紙が開いたのは日が沈みきって月が顔を出した頃だった。
『拝啓リク様。
なんかこうやって改めて書くと恥ずかしいね。
あ、リクおめでとう。結構難しいの作れたと思ったんだけどリクに開けられちゃったね。
この手紙が開けられるのがママからリクに手紙が送られた翌日だということを願います。』
森の入り口に着いた。
木々が茂り、獣道になっているが躊躇いなく突入する。
『リクと最後にあった日、私はママとパパから聖女様について説明を受けました。本当は家族以外には言っちゃダメな決まりになってるらしいんだけど、ごめんね。リクには無関係なことを背負わせてしまいます。私一人じゃ背負いきれないから…』
顔や足に擦り傷がつく。
だが、そんなことは気にしない。
『聖女様に選ばれた女の子は決定の儀の時に目の前で止まったリボンを髪に結うんだって。あのリボンには魔法がかかっていて結われた女の子は眠りにつくらしいの。』
足場が無くなる。
急いで出てきたため箒を持っていない。
「くそっっ…!」
転移魔法で箒を持ってくる。
かなりの魔力を消費するが仕方がない。
『永遠にさめない眠りに。』
箒で木々の隙間をぬけ、目当ての場所までまっすぐに進む。
『100年間。今いる村の人たちが何があったのか忘れた頃にまた新たな聖女を選ぶんだって。』
『リボンは身体を現在の状態に保つ魔法もかかってるから私は眠ってる間成長することはないみたい。』
『聖女決定の儀から3日後、月が真上に上がったとき、聖女交代の儀が行われる。』
なんだよそれっっ!それじゃあ聖女って…!!
『この3日間、かなり考えたんだ。どうして言ってくれなかったんだとか、私たちの命をなんだと思ってるんだとか、ね。』
道が開ける。俺は箒を降りてひたすら走る。
『でもしょうがないかなって、リクが生きるこの世界の平和が約束されるなら良いかなって、やっと覚悟ができたからこの手紙を書きました。』
俺は《聖女の間》にたどり着いた。
『でも、やっぱり眠るのは怖いからリクのおはなしが寝る前に聞きたかったな』
『私が眠る前に、リクの姿がみたいな』
「ーっハナ!!」
俺は声のあるかぎり叫ぶ。
髪を巫女に半分結わえられ、不思議な形の真っ白な服を着た彼女が驚いたように俺を見る。
「リク!?」
「お前!こんなことすることないって!お前がこんなことしなくてもこの村は平和だよ!」
「なりません。もう月が頂点に達します。お下がりください。」
彼女の周りを取り囲んでいる巫女たちに押し戻される。
「大丈夫だって!だから俺と一緒に大人になろうぜ!この村で!また二人でポーションとか作ったり、木に登ったりしよう!お前の無茶を止めるのが俺の仕事なんだよ!」
巫女たちにもちくちゃにされながら必死に叫ぶ。
彼女の髪が結わえられてゆく。
「…リク、ありがとう。」
彼女はにっこりと笑って、言った。
「おやすみ」
彼女の体から力が抜ける。
彼女は巫女に支えられ聖女の間の花のベッドに寝かせられた。
俺の体からもすべての力が抜ける。
俺を取り押さえていた巫女たちが離れていく。
体は自由になったはずなのに指先一つ動かすことができない。
聖女の間には滝があり、柔らかい水しぶきが月の光を受けて新たな聖女を祝福するように虹がかかっていた。
『リク、大好きだよ。』
彼女の手紙が開いたのは日が沈みきって月が顔を出した頃だった。
『拝啓リク様。
なんかこうやって改めて書くと恥ずかしいね。
あ、リクおめでとう。結構難しいの作れたと思ったんだけどリクに開けられちゃったね。
この手紙が開けられるのがママからリクに手紙が送られた翌日だということを願います。』
森の入り口に着いた。
木々が茂り、獣道になっているが躊躇いなく突入する。
『リクと最後にあった日、私はママとパパから聖女様について説明を受けました。本当は家族以外には言っちゃダメな決まりになってるらしいんだけど、ごめんね。リクには無関係なことを背負わせてしまいます。私一人じゃ背負いきれないから…』
顔や足に擦り傷がつく。
だが、そんなことは気にしない。
『聖女様に選ばれた女の子は決定の儀の時に目の前で止まったリボンを髪に結うんだって。あのリボンには魔法がかかっていて結われた女の子は眠りにつくらしいの。』
足場が無くなる。
急いで出てきたため箒を持っていない。
「くそっっ…!」
転移魔法で箒を持ってくる。
かなりの魔力を消費するが仕方がない。
『永遠にさめない眠りに。』
箒で木々の隙間をぬけ、目当ての場所までまっすぐに進む。
『100年間。今いる村の人たちが何があったのか忘れた頃にまた新たな聖女を選ぶんだって。』
『リボンは身体を現在の状態に保つ魔法もかかってるから私は眠ってる間成長することはないみたい。』
『聖女決定の儀から3日後、月が真上に上がったとき、聖女交代の儀が行われる。』
なんだよそれっっ!それじゃあ聖女って…!!
『この3日間、かなり考えたんだ。どうして言ってくれなかったんだとか、私たちの命をなんだと思ってるんだとか、ね。』
道が開ける。俺は箒を降りてひたすら走る。
『でもしょうがないかなって、リクが生きるこの世界の平和が約束されるなら良いかなって、やっと覚悟ができたからこの手紙を書きました。』
俺は《聖女の間》にたどり着いた。
『でも、やっぱり眠るのは怖いからリクのおはなしが寝る前に聞きたかったな』
『私が眠る前に、リクの姿がみたいな』
「ーっハナ!!」
俺は声のあるかぎり叫ぶ。
髪を巫女に半分結わえられ、不思議な形の真っ白な服を着た彼女が驚いたように俺を見る。
「リク!?」
「お前!こんなことすることないって!お前がこんなことしなくてもこの村は平和だよ!」
「なりません。もう月が頂点に達します。お下がりください。」
彼女の周りを取り囲んでいる巫女たちに押し戻される。
「大丈夫だって!だから俺と一緒に大人になろうぜ!この村で!また二人でポーションとか作ったり、木に登ったりしよう!お前の無茶を止めるのが俺の仕事なんだよ!」
巫女たちにもちくちゃにされながら必死に叫ぶ。
彼女の髪が結わえられてゆく。
「…リク、ありがとう。」
彼女はにっこりと笑って、言った。
「おやすみ」
彼女の体から力が抜ける。
彼女は巫女に支えられ聖女の間の花のベッドに寝かせられた。
俺の体からもすべての力が抜ける。
俺を取り押さえていた巫女たちが離れていく。
体は自由になったはずなのに指先一つ動かすことができない。
聖女の間には滝があり、柔らかい水しぶきが月の光を受けて新たな聖女を祝福するように虹がかかっていた。
『リク、大好きだよ。』