学校を卒業してから、俺たちは二人で色々な遊びをした。
大人たちの手伝いをしようと思っても誰も衰えてはおらず元気だったのでむしろ邪魔になってしまった。
正直、暇だったのだ。

「今日はポーションを作るわよ!今あるヤツよりもっと効果が高いやつ!」

と、ポーション作りもしたし、

「弓矢の特訓をしよう!」

と、弓を射ったりした。

彼女のお気に入りは空を飛んでフェリーチェの木の上で村を見渡すことだった。

「ねえ、リク?本当にこの村は平和だよね。本で読んだ『あらそい』なんてこの世にあるのかな?」

「この村がこうやって平和なのは聖女様のおかげなんだろ?他の村には聖女様がいないからそんなことになってるんじゃないのか?」

聖女様が幸せな夢を見続けている間、この村は永久に平和だとされている。

「あははっそうなのかもしれないねっ!」

そう言って彼女はフェリーチェの木から飛び降りた。

「おい!ハナ!?」

あわてて俺は彼女を追いかける。
彼女は箒を手にして俺を手招きしていた。

「ほら、リク!こっちこっち!」

「なんだよもう…ヒヤヒヤしたじゃねえか。」

「あー、ごめんって。それより、こっち来てよ。」

「なんだよ?」

彼女の浮かんでいる真下。
森が不自然にとぎれ、やさしい光が差し込むようになっているその場所は《聖女の間》だった。

「リク、降りてみようか」

「はあ!?だめだろ。大人たちにも近づくなって言われている神聖な場所だぞ。」

「そうは言っても気になるじゃん!」

「だーめーだ!こっちこい!」

たまに出る彼女の無茶を止めるのも、俺の仕事だった。

「でも後ちょっとで100年に一回の《聖女の儀》があるでしょ?選ばれたら嬉しいなぁ」

「お前みたいながさつなヤツが選ばれるわけないだろ?」

「そんなのわかんないじゃない!」

俺たちはこの時、《聖女》がどういうものなのか理解していなかった。