森を上空から見ると、1ヶ所だけ月の光がやわらかく入るところがある。
俺は躊躇いなくそこに降りた。

《聖女の間》

彼女は口元に小さく笑みを浮かべて眠っている。
あのときのままで。

「よお。相変わらず綺麗だな、ここは。」

「村は相変わらず平和だよ」

「お前の両親も元気だよ。」

「お前が幸せな夢を見ている証拠だよな。」

「でも、俺は寂しくてしょうがないんだ。」

「お前がもっと幸せな夢をみられたら、寂しくなくなるのかな…?」

「じゃあ面白い話をしてやるよ」

「俺が寂しくなくなるまで、毎日来てやる。」

「昔、ある村に幼なじみの女の子が大好きな少年がいました───。」

きっと寂しさはなくならない。

だけど少しでも君が幸せになるように。

気づけば、俺の頬を涙が伝っていた。