「朱音!?帰ってくるなら連絡しなさいよ!」
相変わらず声の大きい母。
「おーおー洋介くんと別れたのかー」
ふざけた様子で正解を言い当てる父。
「朱音ちゃん痩せた?」
夕食後だろうにポテトチップスの袋を抱えて食べる妹。
そして足元でほんのわずかな尻尾を振りまくる豆太。
「…家だ」
思わずそう口にしていた。
私の実家は、結果的に1人暮らしとなった西荻窪の家から西に30分ほど行ったところにある。
帰ろうと思えばいつだって帰れるのだが、洋介とのうんぬんを話すことが面倒だった私は、洋介に振られた9月28日以降、一度も帰っていなかった。
「夕飯は?食べてきたの?」
「ううん。あるの?」
「なによもー!ないけど作るわよ、焼きそばでいい?」
母は優しいのだからそのまま言えばいいものを、あえて余計なひと言をつけるのだ。
「え!あたしもあたしも!!」
「じゃあお父さんも~」
「なによ、さっき食べたでしょ!?足りなかったの!?」
ぶつぶつ言う母、食いしん坊の妹、女社会でうまく立ち回る父。
相変わらず私に飛びついてくる豆太。
離れて初めて気付く家族の有難味に、私は遠慮なく甘えさせてもらうことにした。

