ビーサイド


「三ツ矢もそのうちできんだろ。見た目は可愛いし、見た目は」

もう言い返す気力すらなかった。
ポリポリと付け合せのお漬物を食べ続け、憐れんだ倉田が自分の分まで分けてくれる。

「同情するなら旦那くれ…」

「やば、切羽詰まりすぎだろ」

倉田は合コンするか、と言ってくれたが、余計に訳のわからない状況になることは明白だ。
もう自分の中に答えみたいなものはあるのだから。

いつも通り定時の17時半にタイムカードを押して、マフラーをもう一度ぎゅっと強く締め直すが、やっぱり頬は冷たい。

真っ暗な道に光る家々のイルミネーションは、虚しくもあるがやはり綺麗だ。
冬空に電飾の光はよく映える。

「…結婚かぁ」

この立ち並ぶ家のほとんどに、愛し合って結婚した夫婦が住んでいると思うと、自分は普通以下の女なのだと突きつけられているように思えた。

普通に恋愛して、普通に結婚して、普通に子供ができて。
そういう普通のうちの何1つもできていない自分は、社会不適合者のような気さえした。

「ちゃんと座ってなさい、ほら危ないでしょ!」

すれ違ったママチャリに乗った母親は、イルミネーションに興奮して暴れる子供を必死に押さえつけ、そう怒鳴っていた。
時間的にきっとフルタイムで働いて、保育園に子供を迎えに行き、このあと夕飯の支度をして洗濯物を畳んで干して、子供を寝かしつけ、また翌朝はお弁当を作るために早起きしたりするんだろう。

あくまでそれは私の想像だが、そんなこととても自分にはできそうにない。独りのほうが気楽だ、なんてことが頭をよぎった。

きっとこういうところなのだ。私が普通以下なのは。