ビーサイド


言葉を失った。

耳が割れそうに大きな音は、決して苦痛ではなく、むしろ胸が躍る。
色とりどりに照らされたステージでは、髪を振り乱して演奏をするバンドマンの姿。
そのリズムに合わせて、思い思いに飛び跳ね手を上げる観客たち。

そこに佇んでいた私には、床が揺れているのがわかった。

肩を叩かれて白石さんを見ると、何か話しかけてくれているようだが、周囲の音が大きすぎて、何を言っているのかまったく聞き取れない。

「え?」

私は顔を少しだけ、彼の方に傾けて聞き直した。

「耳!痛くなーい?」

― !?

急に耳にかかった息と、柔らかな感触に一瞬で腰が抜けそうになってしまった。

今絶対に、私の耳に白石さんの唇が触れたはずなのだが、彼は何食わぬ顔で私を見つめる。

平然を装って首を横に振って答えたが、たぶん私の顔は赤くなっていたと思う。

ひどい動悸がするし、何よりそんな私を見下ろした白石さんは、今までに見せたことのない顔で笑ったから。

頭をよぎるのは、3Bという単語だった。

バーテンダー、美容師、バンドマン。

彼氏にしてはいけない職業ってやつだ。

ステージ上のバンドが言った「ラスト1曲」という言葉で、会場には先ほどまでよりも一層大きな歓声が沸いた。

きっとそのせいもあったと思う。
この胸の高鳴りが止まないのは。