ビーサイド


頷いた私に、にこっと微笑みかけたこの男性は、白石 涼(しらいし りょう)さんといった。

歳は23歳。
絶対に自分よりも若いとは思っていたが、5つも年下であった。

Besaid(ビーサイド)というインディーズバンドの、ギターボーカルをしているそうだ。

「サイドって、ほんとはsideじゃん。でもうちのベースが高校んときそのスペル間違えて留年したの。だから、あえてsaidって書くんだ」

細く長い綺麗な指で、真っ白な掌にそう書いて説明してくれる姿に、オバサンの胸はときめいて仕方なかった。

見た目にはクールな印象を持ったが、話してみると意外と喋りやすいし、随分と可愛い顔で笑う子だ。

「あ、渋谷。降りるよー」

よいしょ、と気だるそうにギターを持って立ち上がった白石さんは、スタイルも相当にいいようだった。
洋介が174cmだったことを考えると、白石さんは180cm近いのではないだろうか。

このスタイルであのルックス、極めつけにはバンドマンときたら、彼の醸し出すあの雰囲気の理由がわかった。

― 相当遊んでいるな。

独断と偏見の塊であるが、本能的にそう思った。