ビーサイド


「うま~」

私が作ったオムライスを口いっぱいに頬張り、涼くんは笑う。
料理は決して得意ではないのだが、オムライスだけは同棲すると決まった時に練習したのだ。

「よかった」

涼くんの言葉に安心して、笑みがこぼれた。
そういえばこのオムライス、洋介には結局食べさせることがなかったな。

「夜、誰かと会うの?」

もぐもぐしながら彼がそう聞く。

「あ、うん…あれ。元カレ」

瞬時に現在進行形の男と勘違いされたくないと思った私は、そのままを伝えた。
が、それは間違いだったらしい。
涼くんは少し不機嫌になって、まだ会ってんのと少し強い口調で聞いた。

「違う、これが初めてだよ。残務処理的な…」

そう答えた私を疑ったような目で見やって、ふーんと彼は呟いた。

― それなんなの。
私に向けられたわけじゃない彼の嫉妬に、どう反応したらいいのか困った。


私が出かける支度を始めると、彼ものそのそと着替え始めた。

昔運動でもやっていたのだろうか、細いくせに彼の腹筋にはうっすら線が入っていて、それがたまらなく女心をくすぐる。

「変態~」

改めて見惚れていると、涼くんはそう言って上半身裸のまま近づいてきた。
決して見慣れてはいない私は、そんな彼のふざけた態度ひとつで顔が火照ってしまう。

「ほんと年上っぽくないよね」

ぎゅっと抱き締められて、私の心臓は物凄い速さで動く。

「ちょっと、服!服着なよ」

恥ずかしさと甘々な彼の態度に、だらしなく口元が緩んだ。

「今日、終わったらうちきて。俺も遅いけど帰るから」

相当に彼は、“若菜さん”に未練があるのだろう。
昨晩から、やけに独占欲を発揮してくる。

私は若菜さんじゃないのに。
だからそんなに心配しなくても、涼くんからはまだ離れられないのに。

彼はなんにもわかっていない。

「行けたら、行く」

悔しくて、私はそっけなくそう答えた。