ビーサイド


「じゃあかんぱーい!」

― おお。これぞ。
私が想像するところの合コンのイメージにぴったりな光景に、少しだけ胸が躍った。

なんだか遅れてきた青春を謳歌しているような気分だ。

「じゃあさっそく。自己紹介からしますか」

そう言って先ほどのアッシュカラーの男性から自己紹介が始まった。

アッシュカラーの男性は、Besaidのドラムの慎太郎(しんたろう)さん。23歳。

その隣に座るマッシュカットでモードな雰囲気の男性は、ポックルというバンドのギターボーカルで、真琴(まこと)さん。26歳。

彼が涼くんに合コンを頼んだ先輩のようであった。

そして彼の自己紹介でポックルという名前が出た瞬間、むーちゃんが奇妙な声を上げた。

どうもむーちゃんの大好きなバンドの方だったらしく、顔出しをしていない為全然わからなかったそうだ。

こんな女の子の顔をしたむーちゃん、久しぶりに見た。

そしてその真琴さんの隣に座るのが、ポックルのギターの理久(りく)さん。25歳。

こげ茶色のパーマのかかった無造作な髪が、なんともアンニュイな雰囲気を醸し出しており、涼くんの隣に座っていても引けを取らないルックスの持ち主であった。

そして正直に言えば、涼くんを含めても一番私のタイプの容姿である。

そして涼くんの番。

「白石でーす。幹事でーす。彼女募集中でーす!」

わっと慎太郎さんが大きな声で笑ったのを皮切りに、周りも笑いに包まれていたが、私はそれにうまく笑えていたかわからなかった。

― 彼女ができたら、私はどうなるの?

そんなメガトン級の想いを、彼に言えるわけもない。

次朱音ちゃん、という慎太郎さんの声に従い、淡々と自己紹介をするのが精いっぱいであった。

わかっている。私たちは特別な関係じゃない。
これはずっと真面目に恋愛してきた自分を、少しの間解放しているだけ。


― 私だって彼氏募集中なんだからな。

無意味に心の中で強がった。