エレベーターの扉が開くと、すぐにお店の入り口であった。
思っていたよりもおしゃれなところである。
「もういるから」
涼くんの案内で、私たちは彼らの待つ個室へと連れられ、その間むーちゃんと真由子は興奮気味に私の腕を振りまわした。
「白石さんにナンパされるとかやばいよ!」
あの日私が抱いた感情は、間違いではなかった。
本当に彼はすごい人だったようだ。
しかし今私の頭は正直それどころではなく、緊張でフリーズ寸前。
腕を振り回す2人の手を掴み、ただ何度も「緊張するどうしよう」を繰り返していた。
案内された個室の引き戸を開けると、随分と若々しい面々が揃ってこちらを向く。
― ちょっとハードル高いんじゃないか。
涼くんの友達だから当然といえば当然だが、私のようなオバサン場違いなんじゃ…
テンパっている私をよそに、さすが彼女たちは慣れた様子で「こんばんは」と挨拶した。
「もしかして朱音ちゃん?」
突然私の名前を呼んだその人は、その中でも特に若く見えるアッシュカラーのヘアスタイルに切れ長な目の男性。なんとなく猫っぽい。
不審に思いながらもそれに頷き、なぜ知っているのか、と聞き返そうとすると、涼くんが私の腕を引っ張った。
「朱音さんこっち座りな」
腕を引かれるまま、私はその男性から一番遠い奥の席に座らされた。
なんだろう。
ほんの少しの特別扱いが嬉しいのに、何かが引っかかる。

