ビーサイド


「お待たせしました」

涼くんにそう言うと、彼女たちも続いてこんばんは、と挨拶をした。

「こんばんは」

今思えば、彼のこの笑顔は営業スマイルってやつなのだろう。
出会った頃に見せたこの優し気な微笑みは、ここ最近お目にかかっていない。

「涼くんのこと知ってるって」

むーちゃんと真由子を紹介すると、涼くんは本当に嬉しそうに頭を下げた。
2人は涼くんと握手したり、なんやかんやと楽しそうにしている。

「なんかすごい人っぽいじゃん」

亜美ちゃんに耳打ちされて、私もぼそっと、そうみたいと答えた。

そのぶっきらぼうな言い方が悪かったのか、亜美ちゃんはまるで私の気持ちを見抜いたように、ばかだねーと頭を撫でる。

「そんな有名だとは思わなかっただけ!」

亜美ちゃんに強がったところでどうしようもないのだが、自分に言い聞かせるように弁解した。

真由子とむーちゃんに挟まれた涼くんは、私たちに目配せしてエレベーターへと向かう。

まったく随分と嬉しそうな顔している。

若干の苛立ちを覚えていた私に振り返った彼は、

「今日の髪可愛いじゃん」

そう言い放った。

真由子たちに見せていたあの笑顔とは違う。
いつも私に見せる、あの余裕に満ち溢れた笑顔。

― 悔しい。

まるで自分のこのモヤモヤした気持ちが、まるごと見透かされたようだった。
5つも年下の彼に。