ビーサイド


合コン当日。

昨日勢いで買ってしまったニットのワンピースを纏って、いつもより少しだけ髪をきつく巻きシニヨンにまとめると、案外いい感じである。

昨晩熱心にデコルテマッサージをした甲斐あってか、心なし首も長くなったような。

とにかく鏡の中の自分は、いつもよりは可愛らしくまとまっている気がして、それだけで気分は上向きになった。


「朱音ー!」

待ち合わせの新宿駅に着くと、背後から懐かしい声がした。

「むーちゃん!」

偶然にも改札の中で会えたこの子は、むーちゃん。
高1からずっと仲良くしている友人で、本名は睦子(むつこ)という。

その名前が本人は昔っぽいと気に入らないようで、自己紹介でむーちゃんと呼ぶよう強く推奨していたことをよく覚えている。

彼女はファッションデザイナーをしているのだが、なにせ顔が可愛くて、未だにフリーなのが不思議なくらいの子である。

「なんかちょっと!雰囲気変わってない?」

「え?そう?昨日買ったやつだけど」

私はニットのワンピースを指差したが、彼女はそうじゃないと言った。

「なんか綺麗になった気がする」

そんなこと言われて、にやけないはずもなく。
私はデレデレと喜んでしまった。

「先輩のこと心配してたけど、ちょっと安心したよ」

先輩、というのは洋介のことだ。
同じ高校の先輩だったから、もちろん今日誘ったメンバーは全員、私と洋介の顛末を知っている。

「ありがと」

私は今日誘った彼女たちに、洋介と別れたことについてあまり詳しく話していなかった。
それはどこか見栄のようなものがあったのかもしれない。

12年付き合っておいて、28歳で捨てられるなんて可哀想。
正直そんな風に思われたくない、という思いが先行して、彼女たちに話せずにいた。

だが顔を合わせれば、そんなとこでマウント取るような子たちじゃない、と思い出した。

大人になるって、つくづく嫌だ。