ビーサイド


すっかり空気の秋めいた10月の終わり。
とうとう今朝は、薄手のアウターを羽織って出勤した。
テレビでは紅葉の見頃をアナウンスしている。

気づけば、あれから1ヶ月が経とうとしていた。

「おかえり~」

あの日から私たちは、週の大半を一緒に過ごすようになっていた。

私が合鍵で彼の部屋のドアを開けると、いつからか、“いらっしゃい”ではなく、“おかえり”と言われるようになり、

「ただいま」

それに返す“ただいま”が、やみつきになっていた。

部屋のドアを開けて飛び込んでくる彼の笑顔は、やりきれない仕事のストレスやらなんやらを一瞬で吹き飛ばしてくれる。

そして言うまでもないが、週の大半をともに過ごし、合鍵を渡されていても、涼くんは私の彼氏ではない。

「あ、そうだ朱音さん」

涼くんは私がシャワーに入っている間に、手早くカルボナーラを用意してくれていた。

仕事から帰って、イケメンが出迎えてくれて、ご飯まで用意してくれる。
これ以上の幸せがあるとすれば、それが自分を愛してくれる人であるということくらいだ。

「土曜日、何人かで飲み会しない?」

「飲み会?」

「まあ、合コン的な。先輩に頼まれてて」


そう。
こうやって時たま彼氏彼女ではありえない会話があるから、勘違いせずにいられる。